先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼とは?

股関節は大腿骨頭(大腿骨の球形をした先端)が、骨盤の臼蓋というボールをうけるカップをひっくりかえした屋根のような骨にはまりこんでいる関節です。股関節が生まれつき緩かったり、臼蓋形成不全といって、臼蓋の屋根の形状が不完全な場合に大腿骨頭が臼蓋からはずれた状態になります。近年、コアラだっこのような赤ちゃんの股関節を開いて足を自由に動かせるような保育方法の啓蒙が行われ、股関節を脱臼する割合が、100人に2~3人だったのが、1000人に1~3人と激減しました。母やきょうだいに先天性股関節脱臼の人がいる場合は発生率が少し高くなります。

先天性股関節脱臼の治療法について

重度な脱臼や麻痺性の脱臼でなければ、生後3ヶ月くらいからリーメン・ビューゲル装具(図1)で治療します。装着後1週間以内に整復されることが多く、整復時は一時機嫌が悪くなったり、股の部分が腫れたりします。腫れぼったい感じはしばらく続きます。整復を得られた股関節が安定するまでは(約4週間)入浴は控えていただきます。装具期間は約12週間です。股関節の整復が得られていないのに、1ヶ月以上もリーメンビューゲル装具をつけっぱなしにすると、股関節の発育に危険なことがあります。神奈川県立こども医療センター 整形外科では、先天性股関節脱臼治療のガイドライン通りに、リーメンビューゲル装具装着後2週で整復が得られない場合は、一旦外しています。そして、1ヶ月お休みした後、再度チャレンジします。

図1 リーメン・ビューゲル装具

リーメン・ビューゲル装具で整復できなかった場合の、その後の治療法について

リーメン・ビューゲル装具により約7割は整復できるのですが、装具では整復するのが難しい場合があります(図2)。それを無理やり装具で入れたり、力づくで入れたりすると骨頭の変形がおきることがあります。そのため神奈川県立こども医療センターでは、入院しての牽引治療を生後7~8ヶ月以降で行っています。

図2


赤ちゃんは、はじめの2~3日はだっこして欲しくて泣きますが、そのうち慣れてしまいます。はじめは下にひっぱっているだけですが、だんだん頭の上から横に足をひっぱっていき、最後に重りを緩めると自然に整復されます(図3)。この牽引治療法はオーバーヘッドトラクション(OHT)と呼ばれ、名古屋大学出身の山田先生が報告している方法です。神奈川県立こども医療センターの入院期間は約6週間で、最後に全身麻酔をかけて股関節造影を行い、股関節が安定していれば足先から胸のところまでギプスを巻いて、次の日に退院することができます。1ヶ月でギプスを外し、外転装具「ぶかぶか装具」の装着に変わります 。外転装具を装着するまでは入浴をすることはできません。(図4)。

外転装具装着後、はじめの2ヶ月は入浴時以外1日中つけていてもらい、その後は夜だけ装着に3ヶ月以上、その後の使用期間は股関節の安定性により変わります。関節造影した時に関節唇という帽子のひさしのような軟骨が骨頭をおおうようになっていれば安定しているのですが、それが厚くなって内側にめくれこんでいると不安定な状態です(図5)。それでも装具により改善してくることが多いのですが、それでもまた脱臼してしまう場合は観血整復といって臼蓋の中の邪魔ものを掃除して、骨頭を入れる手術をします。

図3

図4 造影後のギプス固定(左) ギプス後に外転装具(右)

図5 不安定:関節唇が肥厚内反左) 安定:(右)

先天性股関節脱臼の治療後の補正手術が必要な場合

大腿骨頭が臼蓋の中に入って整復されても、臼蓋のかぶり具合が浅い場合があります。臼蓋が骨頭を半分くらい程しかかぶっていない状態で、臼蓋がなだらかでなく急峻な場合には、骨盤の骨を切って臼蓋の屋根がかぶさるようにするソルター手術やペンバートン手術が必要なことがあります(図6)。ただし、これは大人になってから痛みがでないようにする予防的な手術なので、その手術をするかどうかは、成長の過程を良くみて判断するべきです。5~7歳で臼蓋が骨頭を半分くらいしかかぶっていなければ、大人になって痛くなってから手術するよりも手術方法が安全且つ簡便なので、手術が推奨されています。

図6 術前(左) 術後(中) 術後1年(右)

歩き始めてから先天性股関節脱臼と診断された場合の治療法について

乳幼児健診を受けていたとしても、関節がやわらかかったり、両側が外れている場合は脱臼に気づかれないことがあります。歩き始めてから歩き方がおかしいことに気づき受診されるケースもあります。3歳くらいまでは牽引治療で治せることが多いですが、それ以上になってくると観血整復や、ソルター骨盤骨切り術やペンバートン骨盤骨切り術といった骨盤骨切り術と、大腿骨の内反骨切り術を同時に行う場合もあります(図7)。神奈川県立こども医療センターでは7歳くらいまでに発見された患児では、日常生活に問題なく、整復状態が得られています。

図7 6歳児 術前(左) 術後6ヶ月(中) 術後2年(右)