膀胱尿管逆流症 Vesicoureteral Reflux (VUR)

* 膀胱尿管逆流症とはどんな病気ですか?
 膀胱尿管逆流症とは腎臓(左右二つある)から尿管(腎臓と膀胱をつなぐパイプ)、そして膀胱へと流れていく尿が、おしっこをするときに膀胱から尿管、腎臓へと逆もどりする状態をいいます(下図)。逆流の程度は5段階に分類されており、腎盂・尿管の拡張が強いほど逆流の程度が強いといえます(下図)。英語の略語でVUR(ブイ・ユー・アール)とも呼ばれ、尿管と膀胱のつなぎ目の「バルブ」機能が先天的に不十分なために生じます。この病気は乳幼児では尿路感染をきっかけとして高熱を出して見つかる場合がほとんどです。


膀胱に一度たまった尿が、膀胱から尿管へ逆流する現象をVURという。膀胱壁への尿管のつながりかたで、逆流しやすい形としにくい形がある。
International system of radiographic grading of vesicoureteric reflux. International Reflux Study in Children. Pediatr Radiol 15: 105-109, 1985 より抜粋 Grade I 逆流は尿管内に限局する。Grade II 逆流は腎盂腎杯内に及ぶが拡張は無い。Grade III 尿管・腎盂・腎杯が軽度拡張する。Grade IV尿管・腎盂・腎杯が中等度拡張し、尿管は軽度の蛇行がある。Grade V尿管・腎盂・腎杯が高度拡張し、尿管は高度の蛇行・屈曲がある。

* どうやって診断するのですか?
 膀胱尿管逆流症はおしっこをするときに見つかることが多いので、排尿時の造影レントゲン検査(排尿時膀胱尿道造影)が診断には必要です。また腎臓の形態・機能を正確に評価するために腎シンチグラムといわれる核医学検査が必要となります。超音波検査(エコー)だけでは、残念ながら確実な診断は出来ません。

* 腎シンチグラムとは?
放射性同位元素(RI=ラジオアイソトープ)を体内に注入して、腎臓の変化をシンチカメラで検出して、画像処理して判定するもので、腎核医学検査とも呼ばれています。腎盂腎炎などの上部尿路感染症により病変部が線維化した腎瘢痕(renal scar)の検出には、超音波検査よりも優れています。2010年にアメリカから出された膀胱尿管逆流症に関するガイドラインでも、腎臓の状態を把握するための検査の一つとして示されており、特に高度逆流症例、超音波検査で腎に異常をみとめるもの、尿路感染をくりかえす場合には行うべき検査といえます。

* どのように治療するのですか?
 膀胱尿管逆流症は成長と共に自然に消失する可能性があります。原則として初期治療は抗菌薬(抗生物質)を一日一回少量飲み続けて感染を予防しながら経過を観察する方法を選択します。薬に対するアレルギーなどがなければ予防投与法は長期に継続しても安全な方法です。予防投与法をしている間に、再び腎盂腎炎を起こすとき、1〜2年と自然消失を待っていても変わらない高度の逆流は手術(逆流防止術)の適応となります。

* 手術はどのように行うのですか?
 手術方法は尿管と膀胱のつなぎ目を補強することです。
私たちの科では開腹手術と内視鏡治療を行っています。
開腹手術には膀胱を開けて尿管のつなぎ目を切り離してつなぎなおす方法と、膀胱を開けずに尿管を膀胱の壁の中に埋め込む方法(膀胱外再建法)の両方を採用しています。いずれの方法も“粘膜下トンネル”を作製して尿管のまわりを補強します(図2)。膀胱外再建法は術後に血尿がなく痛みも少ないので一側のみの逆流症ではよい方法です。
 我々の施設での成績では、もともと尿路の形態や膀胱の機能に異常がある(神経陰性膀胱、巨大尿管、尿管瘤など)場合を除いて、手術の成功率は99%以上です。
 傷はパンツに隠れる3〜4cm位の横の傷です(図3)。手術時間は2〜3時間です。
 内視鏡治療は尿管と膀胱のつなぎ目に薬(デフラックスR)を注入して補強する(図4)手術です。この術式は2010年末より本邦で開始されています。膀胱鏡を利用した手術ですので、お腹を切らずに済みます。海外での成功率は68%〜86.1%と報告されており開腹手術より低く、再発の可能性もあります。


図2、粘膜下トンネルの作製
尿管を膀胱からはずして、膀胱粘膜の下を通す。

図3、開腹手術時の切開線
下腹部の横切開で、下着にも隠れる位置。

図4、デフラックスRの注入療法
膀胱と尿管のつなぎ目に薬剤(デフラックスR)を注入し、逆流を止める。


* 入院期間はどれぐらいですか?
 開腹手術では術後2日目に退院する3日間の入院が一般的です。手術終了時にはおしっこの出口からカテーテルと呼ばれる管が膀胱まで入れてありますが24時間〜48時間後に抜きます。手術翌日は機嫌が悪く、あまり食事や飲み物を欲しがりませんから点滴をします。たくさんの尿量が必要であり、多めに点滴をしますので少し顔がむくんだり吐いたりすることがあります。飲水ができて熱がなく、本人やご家族の不安が解消すれば退院となります。内視鏡治療は通常日帰りで行います。

* 退院後に自宅で注意することはありますか?
 開腹手術の場合でも、傷はフィルムで被われており家に帰ってから消毒などの特別な処置はありません。退院翌日からシャワーは可能です。食事に関して特別な注意はありませんが十分な水分の摂取が大切です。手術後7日間ぐらいは排尿時の痛み・血尿を認めることがあります。

* 手術後の通院はどうするのですか?
 退院後7〜10日で外来を受診します。傷のチェック・エコー検査をおこないます。開腹手術であっても、傷は皮膚の下で縫い合わせてあるため抜糸はありません。開腹手術は成功率がきわめて高いため通常手術後に造影検査は行いません。ただしもともと尿路の形態や膀胱の機能に異常がある場合は手術後3〜6ヶ月で排尿時膀胱尿道造影を行い、逆流の消失を確認します。1年後に外来で尿検査を行います。内視鏡治療の場合は原則として手術後3ヶ月、1年6ヶ月で排尿時膀胱尿道造影を行います。




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