水腎症 Hydronephrosis

* 水腎症とはどういう病気ですか?
 水腎症とは腎臓で作られた尿が腎臓の中や尿の通り道(尿路)にたまって腎臓が拡張した状態をいいます。尿は川の流れのように腎臓から尿管、膀胱、尿道へと流れて体外に出て行きます(図1)。この流れの途中に狭い場所があるとそこより上流の尿路が拡張して水腎症が生じます。拡張の程度はさまざまで、腎臓が尿でボールのように膨らんで見える場合もありますし、正常に比べてわずかに拡張している軽いものまであります。大事なことは「水腎症イコール腎臓が悪い」わけではないということです。


図1 尿路の解剖図 * どういう原因でおきるのですか?
 子どもの水腎症の原因は先天的な狭窄がほとんどです。狭窄する場所で最も頻度の高いのは「腎盂尿管移行部狭窄」といわれる腎臓と尿管のつなぎ目が狭くなっている場合で、水腎症の原因の約70〜80%を占めています(図2)。
 その次は尿管と膀胱のつなぎ目が狭くなっている場合です。この場合は尿管も太く拡張していますので「巨大尿管症」と呼びます。拡張した尿管の先端が膀胱の中に風船のように飛び出している場合は「尿管瘤」と呼びます。現時点でヒトの水腎症をひきおこす遺伝子や遺伝傾向はわかっていません。


図2 水腎症  (腎盂尿管移行部狭窄症)
矢印部分が狭くなっていて尿の通りが悪くなり、腎盂が拡張する。

* どうしてみつかるのですか?
 最近は赤ちゃんが生まれる前に産科でエコー(超音波検査)が行われるため、胎児期にみつかる水腎症が増えています。しかし胎児期や新生児期には何も言われなかったお子さんが尿路感染で熱を出してから発見されたり、年長児になってから腹痛や血尿などの症状でみつかることもあります。

* どうやって診断するのですか?
(1) エコー:
 腎臓の形をみる検査です。妊娠中にお母さんが受けた検査と同じです。拡張の程度で拡張の軽い1度から拡張の強い4度まで4段階に分けます。1度は病的とは考えません。4度は拡張が強く腎臓自体がうすく引き延ばされて見えます。(図3)


図3 水腎症の分類
超音波所見で1から4度に分類する。

(2) 排尿時膀胱尿道造影(VCUG):
 膀胱と尿道の形をレントゲンで調べる検査です。通常3度・4度の水腎症で行います。尿道に細いビニールの管を入れて行います。これは尿路の拡張が狭窄によって起こっているのではなく、排尿時に尿が膀胱から腎臓へ逆流して拡張する場合があるためです。詳細については「膀胱尿管逆流症」を読んでください。膀胱尿管逆流症を合併した水腎症では尿路感染を生じる頻度が高いので注意が必要です。

(3) 利尿レノグラム:
 腎臓の機能と尿路の狭窄の程度を調べる検査です。
水腎症で腎臓がふくらんでいると腎臓が悪いと考える人がいます。しかし赤ちゃんの水腎症では3度や4度の水腎症でも腎臓の機能がよく保たれている場合が多いのです。腎臓の機能はエコーでは正確に診断できません。
 利尿レノグラムでは少量のアイソトープ(放射性同位元素)を注射して特殊なカメラで右と左の腎臓の働きを約40分間調べます。検査の途中で利尿剤(ラシックスと呼ばれる薬)を点滴することで尿路が本当に狭いのかどうかを調べます。膀胱がいっぱいになるので前もって尿道から管を入れておきます。
 この検査は赤ちゃんに行ってもきわめて安全な検査であり、アイソトープによる放射線の影響は普通のレントゲン写真を一枚撮るより少ないことがわかっています。
 乳幼児では検査中の安静が保てない場合は、鎮静剤を使用します。当院では外来での検査を原則としますが、日帰り入院で行うこともあります。

* どのような時に治療をするのですか?
 症状がなくて腎機能が保たれている水腎症では経過を観察します。1歳以下の赤ちゃんでは最初は3〜6カ月ごとにエコーで経過をチェックし、以後は経過中の所見で方針を決めていきます。
 経過中に水腎症が改善することも少なくありません。2度以下で逆流のない水腎症は手術が必要になることは少ないといえます。しかし尿路感染で発熱したり、利尿レノグラムで腎機能が低下している場合は狭いところを直す手術が必要になります。
 腹痛で見つかった水腎症も手術で直す必要があります。一般にエコーによる診断で4度の水腎症は手術が必要になる場合が多いと言えます。
 高度な水腎症では乳児期に尿路感染をきたす可能性があるため、少量の抗生物質を予防的に1日1回飲むことをすすめる場合があります。

* 手術はどのように行うのですか?
 腎盂尿管移行部狭窄症:
腎臓と尿管のつなぎめが狭くなっている場合で腎盂形成術と呼ばれる手術を行います。これは狭窄部を切除してつなぎなおす手術で全身麻酔で行います。麻酔がかかったら最初に膀胱の中を細いカメラでチェックし、さらに尿管に細いチューブを入れて狭窄部の形・長さ・正確な位置をレントゲンで確認します。
 手術は内視鏡を併用して、通常背中側に2cmの小切開で行います。つなぎなおしたあとに尿が漏れるのを予防する目的で尿管の中に細いビニールの管を置きます。この管(ステントと呼びます)は通常からだの外には出てなく腎臓と膀胱をつなぐように留置されます。
 入院期間は通常3日です。退院して4〜6週間後に再度麻酔(なるべく日帰りで行います)をかけて、おしっこの出口から細いカメラを入れ、管を抜去します。体の外から腎臓に細い管(腎ろうと呼びます)を術後1〜2週間留置して尿が外に出るようにしておくこともあります。この場合は入院期間が長くなります。
 手術の成功率は高く約95%ですが、ときに水腎症が改善しないため再手術が必要となる場合があります。その他の合併症としては尿路感染があります。頻度は高くありませんが、術後に高い熱がでてかかりつけの小児科を受診した場合は尿検査をみてもらいましょう。

* 退院後に自宅で注意することはありますか?
 傷は薄いフィルムでカバーされており消毒は不要です。縫った糸は吸収されますので通常抜糸はありません。シャワーは退院翌日から許可しています。シャワーで2日様子をみてからお風呂に入ってください。フィルムがはがれたらそのままで結構です。体内にチューブを留置した場合は運動の後に血尿がでたり、排尿後に違和感が生じる場合がありますが基本的に心配はありません。術後のだっこや歩行の制限はありませんが、運動は術後2週間はやめてください。

* 手術後の通院はどうするのですか?
 通常退院後1週間目に外来に来てもらいエコーをおこないます。手術後1〜2ヶ月はつなぎめがむくむため水腎症が悪化する場合があります。通常3〜6ヶ月でエコーをおこない水腎症が改善しているかどうか確認します。経過観察の期間はお子さんの状況によって異なりますが、乳幼児では小学校入学までをめやすとしています。




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